万引き、家金持ち出しのカウンセリング

うちの子は善悪が分からない?

万引き・家金持ち出しを繰り返し、親が何度善悪を説いても止めない。
警察に連れていって警官から指導してもらっても改善しない。
なかには万引きが見つかるように盗む子どももいます。

このような時、
「この子は善悪が分からないのではないか…」
「昔、テレビで万引きがやめられない大人を見たけど、そういう病気なのか…」
「欲しいと思ったら我慢できない。この子はやはり発達障害では…」
と思われる方もいらっしゃいます。

親としては打つ手がなくなり、カウンセラーに子どもとの面接を望まれます。
子どもは何を考えているのか、なぜ万引きを繰り返すのか、聞き取ってほしい、と。

しかし、万引きなどの善悪が分かりやすい問題行動の際には、子どもは一回会った大人に本心は言いにくいものです。また子ども自身、盗みの動機は言語化できなかったりもします。

カウンセラーとしては、
故河合隼雄先生の書籍『今ここに生きる子ども 子どもと悪』岩波書店 1997年に記載されている
”子どもは盗みまでして「ほんとうは、何が欲しかったのでしょうね」”
という言葉は忘れないように意識しています。

親としては、「だからそれをカウンセラーに子どもから聞き取ってほしいんだよ!」と思われるところですが…
(もし出来たとしても)カウンセラーが子どもから聞き取って、それを解決して終了、では子どもが「欲しかった何か」は手に入らないことになってしまうでしょう。

ご家族が子どもの表出する問題にどのように関わり、何を発見して自分達のものにしていくのか、このプロセスにより繰り返される万引きは治まるのだと思います。

カウンセラーはてっとり早く万引きを解決するのではなく、(もちろんなるべく効率的な面接を心がけますが)このプロセスのお手伝いをさせていただきます。

万引き・家金持ち出しのカウンセリング

当相談室の全ての相談に共通ですが、誰が・何人来室されるかによって、面接の進め方は変わります。

万引き・家金持ち出しをしている本人が来室された場合

せっかくご本人が来てくれているのですから、本人が拒否しなければなるべくカウンセラーと一対一で話していただきます。

今日はなんと言われて来室しているか、来ることになった理由は何だと思うか、その理由に対してどう考えているか、
などを最初にうかがいます。

万引き・家金持ち出しについてはっきりと話す方もいらっしゃれば、はっきり話さない方もいます。
万引き・家金持ち出しに限りませんが、
やってしまった行為やその要因・本心については、初回のカウンセリングでは(どちらかといえば)はっきり話さない方の方が多いです。

本人がやってしまったことに対して、どう考えているかは大事なので確認しますが、カウンセラーはこの点についてはあまり時間をかけません。
またカウンセラーはやったことの善悪を諭すようなことはしません。
(カウンセラーが今さら説教しても逆効果なのです。説教した場合、かえって万引きはひどくなるでしょう)

万引き・家金持ち出しの話ばかりしていると、
本人もカウンセラーも行き詰って苦しい時間になります。
実際には、ソリューションフォーカストアプローチの解決構築の考え方で進みます。

本人としては、今後どうなりたいのか、どうなったらいいのか、をカウンセラーは聞いていきます。

その他、
どのような一日を過ごしているのか、
万引き・家金持ち出しをするからには苦しい状況だろうが何か良い時間はあるか、
何に困っているか、
などを聞いていきます。

この時は、ほとんどの方がよく話してくださいます。

受験やきょうだいとの比較や様々な理由で疲れていること、親・きょうだいなどへの不満・恨み、本当は〇〇がしたい、などを話してくれます。
(ここまでで大分時間がかかり、カウンセラーは時間的に焦ってくるのですが…)

そして本人との一対一を終える際に、
本人の語りのどこからどこまでを家族と共有して良いかを確認します。

「親に伝えないでほしい」とおっしゃる方もいます。
ですが、本人の語りだけで終えては効果があがりにくくなるので、
カウンセラーは本人の望む環境・やりたいことを実現するためには、家族の理解・協力が必要、と伝えます。
何を家族に伝えるのが本人にプラスとなるか、を交渉します。

そして家族に合流していただき、本人のお話をフィードバックします。

この際のご家族の反応は本当に様々です。
本人がそんなことで苦しんでるとは思ってなかった、と涙を流される方もいれば、
言われてみれば思い当たることもあります、という方もいます。

最後に、カウンセラーからご家族に対して、
万引き・家金持ち出しは一旦横に置いて、
本人が語った(万引き・家金持ち出し以外の)本人が困っていることを解消することをお願いします。

またご家族に対しては、
ソリューションフォーカストアプローチの観察課題をお願いすることもあります。
本人を見て、本人が調子が良さそうな時・気分が良さそうな時について、本人・家族やその他の状況はどうであるか、をご家族に注意を向けてもらいます。
これで初回は終了になります。

二回目に来室された際に、
本人の困りごとが(完全は無理なのである程度)解消していたり、ご家族が観察課題をすることで何か気づきを得ていると、
初回来室の時よりはるかに良い表情を本人もご家族も見せてくださいます。
(万引き・家金持ち出しもなくなっています)

カウンセラーは、
なぜ万引き・家金持ち出しが止まったと思うか、何が良かったか・効果があったと思うか、
などを質問します。
(これを本人とご家族に語っていただくことは、良い状態を維持するために効果的です)

そしてカウンセリング終了、となります。

万引き・家金持ち出しをしている本人が来室されない場合

当然ですが、ご本人が来室されない場合もあります。

この場合はご家族へ、
何が要因だと思うか、本人がこの場にいたら何と言うだろうか、などを語っていただきます。

本人が何を望んでいるだろうか、そしてそれを叶えるために家族はどうするか、と進みます。
このまま進めば話は早いです。
本人が来室された時のように、解決することも多いです。

一方で、この段階で夫婦の不仲(DV含む)や、家族はおそらく発達障害で良い関りはできない、
といった話になることもあります。
来室されているご家族自身が苦境にあることが語られることもあります。

こうなると、来室されている方の状態、エネルギーがどれほどあるか、ということが重要になります。
来室された方がまだ頑張れる(頑張りたい)のであれば、万引き・家金持ち出しをした本人にとって良い環境を作ることに注力していただきます。
(観察課題をお願いすることもあります)

来室された方が疲れきっていたり、とても傷ついていたり、
という状況であれば(万引き・家金持ち出しは一旦横に置いて)来室された方が元気になっていただくことが優先になります。

※万引き・家金持ち出しを一旦横に置きますが、来室された方がエネルギーを回復することで家族のバランスが変わり、万引き・家金持ち出しが解決することもあります。カウンセラーはこれを意図しています。

最後に

上記の万引き・家金持ち出しのカウンセリングで表現できているか分かりませんが、
実際のカウンセリングでは、万引き・家金持ち出しのことをあまり話しません。
多くても全体の時間の3~4割でしょうか…

本人と家族の、万引き・家金持ち出しに対する認識については確認しますが、
それ以上はカウンセラーはあまり言及しません。
それで十分に解決は期待できます。

大事なことは、
本人の困っていることに気づくこと、本人の「本当は~になりたい」の方にエネルギーを向けてもらうこと、

だと思います。

これを具体的にどうするかを、本人の日常生活を知らないカウンセラーは指示することはできません。
(カウンセラーがカッコつけて、〇〇が原因なので~~しましょう、と言っても、「もう試して効果ありませんでした」で終わりです…)

ですが、カウンセラーが思わず「あぁー!そうだったんですね!」と大きく頷くような具体的な気づきや新たなエピソードを、
みなさんご自身で見出して実行してくださいます。

そうなるとご家族も本人も、万引き・家金持ち出しがあった時よりも、日常が楽になっています。
本人も万引き・家金持ち出しをする必要もなくなっています。


万引き・家金持ち出しが改善したのは先生(カウンセラー:鈴木)のおかげです、と言ってくださる方もいらっしゃいますが、
カウンセラーは質問をして、観察課題をお願いしているだけです。

新たな家族の姿を作ることができるのは、ご家族みなさんの力です。

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