ソリューション・フォーカスト・アプローチ

ソリューション・フォーカスト・アプローチ

千葉カウンセリングルーム

概要

ソリューション・フォーカスト・アプローチ(Solution-Focused Approach、以下SFA)は
ド・シェイザー、インスー・キム・バーグの夫婦が中心になって
1970年代後半に米国で開設したBFTC(Brief Family Therapy Center、直訳すると短期家族療法センター)で研究・開発された心理療法です。

SFAと解決志向ブリーフセラピーを同義に認識される方もいれば、
解決志向ブリーフセラピーを広義にとらえてその中にSFAがあるという認識もあります。
いずれにしてもミルトン・エリクソンから始まった広義のブリーフセラピーが源流にあります。

特徴として、問題の原因を追究しません。
すでにある問題を解決するのではなく、未来のより良い姿を構築していきます。


問題解決ではなく解決構築です。
それにより、結果的に短期間で望ましい変化が得られるとされます。

この解決構築の考え方は、
児童福祉業界で広まっているソーシャルワークの考え方:サインズ・オブ・ セーフティー・アプローチ (SoS)にも取り入れられています。

中心的な考え方と前提

中心的な考え方として以下の3点があります。

1,うまくいっているなら変えるな
2,一度やってうまくいったなら、また行え
3,うまくいかないなら、違うことせよ

上記の3点は当たり前のようですが、
現実には親が子に、先生が生徒に、上司が部下に、精神科医が患者に、うまくいかない関わりをし続けていることはあります。

また以下の4点を基本的な前提としています。

1,変化は絶えず起こっていて必然
2,小さな変化は大きな変化を生み出す
3,解決について知る方が、問題と原因を把握するより有用
4,相談者は問題を解決する資源・資質(リソース)をもっている。相談者自身が自らの専門家

上記の中心的な考え方・基本的な前提にも表れていますが、
SFAは困難な中でも上手くいった”例外”を探します。

その例外を行い、小さな良い変化を起こし、良い変化を拡大していき、良い変化は更なる効果を生み…
とプラスの循環を作り上げていきます。

その結果、元々の問題を解決しようとせずとも、
未来のより良い姿が構築(解決構築)されることになります。

面接の流れ

一般的には初回面接は以下の流れになります。

相談者からの問題の説明:
この部分は他の療法とあまり変わらないが、SFAではこの部分にあまり時間をかけない。

ウェルフォームドゴールの設定:
まず相談者の望む姿(ミラクルピクチャー)をイメージする。
望む姿は「問題がない」ではなく、問題がない代わりに相談者が「どうなっているか」「何をしているか」で表現する。

相談者に望む姿を語ってもらうが、ありえない大それた姿を漠然とイメージして終わりにしない。
大それた姿でもその姿に繋がる現実的な最初の一歩となる具体的な行動に明確化していく。

例外の探索:
望む姿(ミラクルピクチャー)やウェルフォームドゴールが、現実で少しでも起きている時を探す。

その例外の時に、誰が何をして例外が起こったのかを明確にしていく。
この作業で、相談者が自らの影響や役割、努力するべきことなどに気づいていく。

初回面接のフィードバック:
相談者を労いつつ、次回面接までの課題を出すこともある。
課題には例外を探すための観察課題や、実際に具体的な行動を試すことをお願いすることもある。

ソリューション・フォーカスト・アプローチの質問

具体的な面接のスキルとしては、だいたい以下の質問が代表的です。

差異の質問
「今ご説明いただいた問題が解決したとしたら、今と何が違ってきますか?」
のような質問。
問題の説明を一通り聞いたところで、この質問から解決像を描いてもらうことを始めることもできる。

関係性の質問
「もしあなたがニッコリと『おかえり』と言ったとして、お子さんはどう感じると思いますか?」
のような質問。
相談者にとって重要な他者との相互関係について考える質問。

ミラクル・クエスチョン
「もし奇跡が起こって~」
のように、将来の解決像をイメージしてもらうための質問。
なるべくリアルにイメージしてもらえると解決構築に繋がりやすい。

SFAといえばこのミラクル・クエスチョンが有名だが、
相談者の意欲や年代に合わせて、アレンジすることも必要になる。

例外探しの質問
問題が起きていない、うまくいっている時について、具体的にしてもらう質問。
例外は解決の一部である、という考えが前提。

スケーリング・クエスチョン
「10点満点で今何点ですか」
の質問。
問題から離れて客観視して、相談者自身が変化に気づくことを促す、などに有効。

コーピング・クエスチョン
相談者が自らの強み・資源に気づくことを促す質問。
「困難な状況の中、どのようにして~」となるので、別名サバイバル・クエスチョンとも言える。

ポイントと効果がでる理由

SFAは特徴的な質問をすればいいのかと言うと、もちろんそんなことはありません。
質問を真似るだけでは相談者の悩みは解決できません。

カウンセラー(鈴木)がポイントと考える点をあげます。

・プロブレムトークからソリューショントークへの移行

プロブレムトークとは問題やその影響についての話。
ソリューショントークとは望む姿や解決についての話です。

相談に来られる方は問題と思って悩んでいるので、どうしてもプロブレムトークが多くなります。

とくに夫婦関係の相談などは、不満や恨みが長く続きがちですが、それでは悩みは悩みのままです。
いかにソリューショントークに切り替わってもらうかが大切で、上記の差異の質問は有効です。

・望む姿や例外を相談者に考えてもらう
SFAでは、問題があるマイナスの状態をスタートに考えません。
望む姿(ミラクルピクチャー)を描いて、望む姿に向かって(問題とは関係なく)ゼロから考えてもらいます。

この望む姿やウェルフォームドゴール、例外が現実にはなかなか思いつかないことが多いです。

カウンセラーはこの時に口を挟みたくなりますが、
相談者が黙って考えている間は粘り強く待つ必要があります。
(この相談者が黙って考えている時に、相談者の中で色々なことが起こっていて、解決構築に繋がっていきます)

そして相談者からなんとか出た望む姿や例外について、
その意味や重要性を掘り下げたり、さらに広げて発展させたり、スケーリングクエスチョンで客観視していきます。

そうしていく中で、相談者の問題に対する見方や意味づけが変わっていきます。

なぜ問題に対する見方や意味づけが変わるのかは、SFAの教科書と言える本には以下のように書いてあります。

現実の見方や定義に新しい意味を与えて、それを変化させるクライアントの能力は、問題に取り組む上できわめて重要な資源となる。クライアントが変わる力は、物事を違った観点からみる能力に関係する。

(前略)現実の見方と定義の変化はクライアントが解決をつくる上で重要な部分であり、違う未来と役に立つ例外の会話の中で容易に生じる。

Peter De Jong,Insoo Kim Berg(2013).Interviewing for Solutions,Fourth Edition.Brooks/Cole Cengage Learning(ピーター・ディヤング,インスー・キム・バーグ 桐田弘江・住谷裕子・玉真慎子(訳)(2016)解決のための面接技法〈第四版〉 金剛出版) より


上記は抽象的な文章ですし、
本当にそんな話をしているだけで物事が解決するの?
と思われるかもしれませんが…

問題に対する見方や意味づけが変わることの力は強力です。

最後に

相談者が相談者自身の専門家と考えて、
その力を信じきるところは動機づけ面接と共通です。

また関係性の質問はゲシュタルト療法のエンプティチェアに通じるところがあり、
エンプティチェアよりも刺激を減らして重要な他者との関係性を扱えます。

SFAは相談者と対立したり傷つけるリスクが少ない素晴らしい技法だと思います。

ですが、表面的にSFAの質問を使うだけは効果はありません。

解決構築をしていく中で問題に対する見方と意味づけが変わり、問題が解決するのですが…
この過程、つまり望む姿やウェルフォームドゴール、例外などについて、掘り下げたり広げたり客観視したりしてもらうことがうまく進まないこともあります。

その時に一つの技法に固執してカウンセラーが相談者よりも早く進んでしまうと、
SFAをしているつもりがSolution-Focused ではなくてSolution-Forced(解決の強要)面接になってしまいます。
この点だけは常に意識している必要があります。

参考文献

〇Peter De Jong,Insoo Kim Berg(2013).Interviewing for Solutions,Fourth Edition.Brooks/Cole Cengage Learning(ピーター・ディヤング,インスー・キム・バーグ 桐田弘江・住谷裕子・玉真慎子(訳)(2016)解決のための面接技法〈第四版〉 金剛出版)

SFAの教科書とも言える本です。
6千円と少し高い(DVDが入っているから?)ですが、DVDでインスーとピーターの動画が見られます。

一般の方でしたら、故森先生と黒沢先生の共著が出てまして、読みやすいです。

〇森俊夫・黒沢幸子(2002)『<森・黒沢のワークショップで学ぶ>解決志向ブリーフセラピー』ほんの森出版

〇森俊夫(2015)『ぶり―セラピーの極意』ほんの森出版

〇Mo Yee Lee,John Sebold,Adriana Ueken(2003).Solution-focused treatment of domestic violence offenders:accountability for change.Oxford University Press(モー・イー・リー, ジョン・シーボルド, エイドリアナ・ウーケン 玉真慎子・住谷祐子(訳)(2012)DV加害者が変わる:解決志向グループ・セラピー実践マニュアル 金剛出版)

SFAに基づいたDV加害者グループはカウンセラー(鈴木)の知る限り日本で行われてません。
ですが、この本は面接を望まない方に対して、いかにSFAが傷つけずに効果をあげるのか、を考えさせてくれます。

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