不登校のカウンセリング

千葉カウンセリングルーム

不登校との距離感と支援の姿勢

親としては学校に行ってほしいのは当然

不登校の子どもは平成24年(2012年)以降、増え続けています。

文部科学省の『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』によると、
小学校では令和4年度に初めて10万人を超えました。
中学校でも令和4年度では、193,936人と20万人に届きそうです。

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エクセルの表で見ると(文字が見えるように平成23年度から載せていますが、それでも見えにくくて申し訳ありません)、
子どもの人数は少子化で減っているのに不登校は増えているので、不登校の子どもの割合が上っているのが分かりやすいです。

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文部科学省は、「不登校は問題行動ではない」としています。
不登校は問題行動ではなく、不登校の子どもも増えています。
(令和4年度で小学校は1.7%で59人に1人、中学校は5.98%で17人に1人)

ですが千葉カウンセリングルームとしては、
「学校は行けるならば(行けるようになるならば)、行けるにこしたことはない」
と考えています。

その理由ですが、
多くの機能(知識・技術の習得、体力向上、道徳や人間関係の学び、多感な時期を仲間と過ごす時間等)がパッケージングされていて、
体験できる内容がとても多いからです。

また、子どもが親から離れて自立していくためには、
「家の外で、親の助けがなくても自分は大丈夫。やっていける。」
という感覚が必要になります。

この感覚は、家庭の外で仲間との時間や学業・スポーツなどでの体験を通じて味わえることが多いです。
このような体験ができる場所は、今の日本ではやはり学校が第一候補になるでしょう。
学校外の塾やスポーツなどもありますが、無理に学校を外す必要もありません。

千葉カウンセリングルームとしては、
学校に行き将来の自立に必要な家庭外での成功体験を積むことができれば、それにこしたことはないと考えます。

不登校支援の基本的姿勢

文部科学省の『「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日』に以下の記載があります。


不登校児童生徒への支援は、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること。
また、児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。

文部科学省『不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)』2019年 より

千葉カウンセリングルームとしても上記の内容には同意しています。

学校に行けるにこしたことはない、と思いますが、
親が本当に望んでいることは、
子どもの幸せと、将来の自立のための成長だと思います。

いじめが改善しなかったり、そもそも学校が子どもに合わないのならば、
子どもの幸せと成長とは反対方向に進むことが多いでしょう。

不登校のもつプラスの側面(自らの生き方を主体的に選択する)も意識して、
子どもの幸せと成長のために学校以外の選択肢が更に増えてほしいと思っています。

不登校の要因

学校で消耗して家庭で回復できないと…

不登校の状態像は本当に人それぞれで、不登校の要因も異なるので一概には言えません。
そのため、不登校支援は”応用問題”という表現もされるくらいです。

当たり前ですが、就学前・小学校低学年と中学生では要因も異なることが多く、不登校に伴う症状・行動も異なります。

就学前・小学校低学年の要因としては、
どちらかというと母親から離れることの不安の割合が高いことが多いです。

一方、思春期年代では(親からみると小さな)失敗・つまづきでも、
(思春期年代ではまだ経験が少ないので)子ども本人が過剰に反応して、家庭外でやっていけないと思ってしまい家庭内に引きこもる、
という状態が多いです。

中学生は小学生よりも不登校になる割合が高いですが、
要因としていじめのような決定的な要因もありますが、複数の要因がタイミング悪く重なってしまった結果の不登校もあります。

友達との関係性、担任の子どもへの理解度と相性、部活動の練習の厳しさやレギュラー争いの挫折、恋愛(告白の失敗など)、学習のついていけなさ、
といった思春期の子どもが揺れることは他にも沢山あります。

そこに家庭でも子どもがストレスを感じている状態が重なると、
学校で消耗したエネルギーを回復する場がなくなります。

その結果、学校で踏ん張り続けることができなくなります。

ESS(電子スクリーン症候群)も不登校の要因では?

このホームページのESS症候群(電子スクリーン症候群)について
に記載していますがESS症候群(電子スクリーン症候群)は正式な診断名ではありません。

ですが千葉カウンセリングルームとしては、
令和の時代の不登校を考える上で欠いてはならない概念だと考えています。

平成28年、文部科学省の『不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多用な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~』には、以下のようにあります。

カウンセラーとしては大変興味深い内容です。

「平成18年度不登校実態調査」では、「不登校のきっかけ」として、「友人との関係」が52.9%、「生活リズムの乱れ」が34.2%、「勉強が分からない」が3 1.2%となっている。(中略)
また、「平成5年度不登校実態調査」にはない選択肢「生活リズムの乱れ」が「平成18年度不登校実態調査」では2番目に多く選択されている点にも留意する必要がある。(中略)
また「不登校の継続理由」との関連が高い「不登校のきっかけ」として、「無気力でなんとなく学校へ行かなかったため」では、「勉強が分からない」「生活のリズムの乱れ」「インターネットやメール、ゲームの影響」(中略)となっている。

不登校に関する調査研究協力者会議『不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多用な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~』2016年 より

カウンセラーの実感としても、不登校の子どもの”無気力””勉強が分からない””生活のリズムの乱れ”は年々増している印象です。

そして、この”無気力””勉強が分からない””生活のリズムの乱れ”は
スマートフォンやゲームなどの利用によるESS症候群(電子スクリーン症候群)の症状ではないか、
と考えています。

”夜遅くまでスマホやっていたら、睡眠不足で生活リズムが乱れるだろう”という話で済ませるのではなく、
脳に影響が出ている”
という考え方が、我が子を守ることに繋がるのだと思います。

いじめと不登校

思春期はいじめがおきやすい時期です

いじめを肯定するつもりはありませんが、思春期はいじめが起きやすい時期と言えます。

ギャンググループ・チャムグループ・ピアグループという言葉をご存知でしょうか。

ギャンググループは男子に多く小学校高学年頃、チャムグループは女子に多く中学生頃に良く見られる仲間集団です。

どちらも”同じ”であることを重視し、”違う”ものを排除・攻撃することもあります。
(大人も外側に敵を作ることで自分達の団結を強めることがあると思います)

ピアグループは高校生以後にみられる異質性を認められる集団です。

ではギャンググループ・チャムグループが無くなるように大人が見張れば良いかというとそうではなく、
思春期に親からの自立に挑戦する際に、親の抜けた部分を埋めて子ども自身を支えるために必要な仲間関係です。


多くの学びもあり、生涯の友人を得る機会とも言えるでしょう。

ただ、いじめの要因になるものではあると思います。

いじめへの対応は難しいです

いじめへの対応ですが、令和の現在は大体の学校のホームページに、”いじめ防止基本方針”が載っています。

”基本方針”なのであまり具体的な内容ではないかもしれませんが、
まずは一読いただくと良いと思います。
このホームページも字数の都合上、具体的な内容は載せられませんが…

なぜいじめ対応が難しいか、だけを簡単に載せますと、
何をもっていじめとするか、
というところから難しいのです。

令和6年時点の文部科学省のいじめの定義ですが、

「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

となっています。

なぜ令和6年時点は、と書くかというと、いじめの定義は社会情勢とともに変わっているからです。
文部科学省のホームページに、
”いじめの定義の変遷”というPDFが載っています。

痛ましい事件を繰り返さないよう、いじめ被害者を漏らさないように、と定義が変わっているのだと思いますが、ただ現在の定義を改めて読んでみると、
”被害者が心身の苦痛を感じたらいじめ”ということになります。

いじめの定義が変わる中で、いじめとする範囲が広がっていったのだと思いますが…
国の定義がこのような状況の中、実際の現場では何をもっていじめとするのか、というところから難しいのです。

そして子ども同士では、どちらか片方が問題、ということはあまりなく、
(子どもですので当然ですが)被害者とされる側にも課題があったりするので、対応が難しくなります。

たとえば学校では、集中が続かなくて落ち着きがない子を、正義感の強い子が繰り返し注意をしたら、「いじめられた」となったりもします。
注意された子が(日頃から他児とうまくいってなかったりして)「学校に行きたくない」と言ったら、いじめの重大事態の要件に当てはまってしまいます…

注意した子・された子にどう対応するか…上記の例くらいなら簡単ですが、
実際にはどちらかに発達障害の傾向があったりすると対応が難しくなり、双方の親の思いも絡み、
「いじめは許さない」だけでは解決できません。


長くなってしまったのでここまでとさせていただきますが、
いじめについては
山本獎・大谷哲弘・小関俊祐『いじめ問題解決ハンドブック 教師とカウンセラーの実戦を支える学校臨床心理学の発想』2018年 金子書房
が読みやすく、具体的な対応も載っていて参考になると思います。

この本には、加害者・被害者への対応以外にも、
現実としてどのような行為をいじめとするのか、いじめと人間関係のトラブルをどう線引きするのか、傍観者にはどうするか、親への対応、なども載っています。

子どもは対人関係を学んでいる過程にいるので、悪意はなくてもいじめは起きます。
(千葉カウンセリングルームとしては理不尽・人権侵害をいじめと考えます)

その際に、必要以上に傷つかずに、成長の機会とできるように、千葉カウンセリングルームもお手伝いができればと思います。

不登校の子どもの状態像

不登校の類型

不登校については、性別・年齢・要因・期間・重篤の程度・発達障害や精神疾患の有無などによって色々な分類の仕方がありますが、
齊藤先生(齊藤万比古『増補 不登校の児童・思春期精神医学』 金剛出版 2016年)は、子どもの年齢では2つ、思春期の不登校のタイプでは4つに分けています。

年齢では、小学校低学年までと思春期(小学校高学年から中学生年代)で分けています。

思春期の不登校について、タイプでは過剰適応型、受動型、衝動型、混合型の4つに分けています。

過剰適応型は学校や仲間に抵抗できることを強調し、弱みをみせず失敗や恥を過剰に恐れます。

受動型は周囲に圧倒され委縮して身を固める状態です。
なかには能動的にならないことが自己主張(受動攻撃性)になっている子どももいます。

衝動型は衝動的な振る舞いや加減の無さから仲間から孤立してしまいます。

混合型は前3タイプが混合したものです。

文部科学省は『平成18年度不登校実態調査』では、
「不登校の継続理由」から傾向分析し、
「無気力型」、「遊び・非行型」、「人間関係型」、 「複合型」、「その他型」の5つに類型化しています。

千葉カウンセリングルームとしては、
この「無気力型」は特にESS(電子スクリーン症候群)が関連していると考えてます。

不登校の併存症状

不安や抑うつ、強迫(手洗いや確認など)、睡眠の問題、摂食障害などは、
不登校の前からだったのか、不登校の結果としてなっているのか、
の前後関係が分かりにくいかもしれませんが、思春期の不登校ではみられる症状です。

また発達障害・知的障害は対人関係に影響するため、不登校の要因になりえます。

ゲーム・インターネットへののめり込みはもちろん、家庭内暴力も珍しくありません。

不登校と一括りにしても、その要因も子どもの状態像も様々です。

複数の症状が重複することも多いため、親としても何が要因なのか、わけが分からなくなることもあると思います。

身体症状について

不登校の子どもの多くが、どこかのタイミングで頭痛や腹痛といった身体症状を訴えます。

山崎先生の書籍(山崎透『不登校支援の手引き 児童精神科の現場から』 金剛出版 2019年)によると、
不安・抑うつの症状がなくても、身体症状のとらわれやこだわりが優勢な子どもは、不安・抑うつ症状を伴う子どもと比べて、身体症状も不登校も長期化しやすい、
としています。

また身体症状の持続期間と不登校期間が正の相関関係(身体症状が長いと不登校も長くなりやすい)にあり、
身体症状のある時期の対応が不登校支援において重要としています。

ですが不登校の子どもが身体症状を訴えた場合、
周囲の大人(特に学校の先生は立場上)は対応に困ると思います。

参考として、山崎先生の書籍から概要を抜き出して記載させていただきます。

①身体疾患と鑑別する

不登校の子どもが身体症状を訴えると、大人は安易に「精神的なもの」として解釈してしまいがち。

しかし、頭痛が脳腫瘍などの可能性ある。医療機関で診療・検査をうけ、身体疾患を除外することが第一。
その上で、不登校に伴う「心理状態に関連して出現する身体症状」として対応していく。

②身体症状を強化しない。
医療機関で身体疾患を除外しても症状は続く。そのため、別の医療機関を受診することもある。

こうした検査の繰り返しは、子どもの身体症状への関心を高めることがある。
また受診のたびに医師に「精神的なもの」と片づけられることで、身体症状にしがみつきやすくなることもある。

親が身体症状を「詐病」「怠け」として登校を強制したり、「症状がよくなれば登校できるはず」と身体治療に躍起になることも、
身体症状を強化したり長引かせることになる。

③子どもとのやり取り
まず身体症状の存在を認め、そのつらさを汲むことから始める。

その上で、「医師に精神的なものって言われて、どう思いましたか」「ストレスがかかると体の症状が起こりやすい、と一般的に言われているんだけど、何か思い当たることはありますか」
などと問いかけて、子どもの反応をみる。

その後、基本的には身体症状についてはその存在を認めつつも、あまり大きな関心を張らず、
「体調と相談しながら、日常生活をどう工夫していくか一緒に考えよう」という姿勢で望む。

面接を重ねる中で、子どもが身体症状を「手放し」て、
本来の課題に取り組めるよう支援することを心がける。

思春期の親に対する葛藤について

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思春期の子どもが不登校になると、家庭内で暴力・暴言・物を壊すなどをしたかと思えば親に甘えてきたり、
といった相反する極端な行動をすることがあります。

親としては、子どもが何を考えてるのかさっぱり分からない、と感じるのではないでしょうか。

思春期は、親から自立していく第一歩の時期です。

これまであった親の支えを外すには、新しい支えが必要になります。

家庭外の学校や仲間を新しい支えとすることができれば良いのですが、
不登校は新しい支えの獲得に失敗した状態とも言えます。

となると子どもは親(家庭)の元へ戻るしかないのですが、
思春期になるとこれが激しい葛藤を生みます。

苦しい社会(学校)を避けて以前のように母親に依存し甘えたい、
でもその状態は思春期の子どもには居心地が悪く、自分自身の社会での挫折と失敗を明確にしてしまう。

母親にくっつきたいが、くっつけない、といった状態になります。

この葛藤が高まっている時に、親から何らかの刺激があると家庭内暴力にもなります。

相反する両極端な心理で葛藤し、それが時に行動にも現れる、
ということは思春期の特徴の一つで、とくに不登校の場合には顕著にみられるでしょう。

不登校の支援(思春期以降で長期化している場合)

なるべく多くの大人が当事者意識を持てると理想です

ここでは思春期の不登校についての話になりますが、
不登校の要因に書いたように、不登校は複数要因がタイミング悪く重なり、
子どものストレス許容範囲を超えたことを表す事象とも言えます。

要因が多ければ多いほど、不登校要因に関わる大人が多いことになります。
この関わる大人達がみな当事者であるという意識をもてると、子どもも動き出しやすくなります。

またこの考え方の良い点は、大人の全員が当事者ですので、特定の犯人を決める必要はありません。
大人それぞれが自身の領域で子どもに合わせて出来ることをすることになります。

とくに不登校の要因を父親が母親に押しつけ、母親を追い詰めると、
更に母子密着が強くなって引きこもり方向に進み、逆効果になります。
これは避けたいです。

不登校の回復段階

不登校の経過については齊藤先生(齊藤万比古『増補 不登校の児童・思春期精神医学』 金剛出版 2016年)の書籍によると、
不登校準備段階・不登校開始段階・引きこもり段階・社会との再開段階の4段階となっています。

またこの4段階は不登校が長期した際に当てはまりやすいもので、必ず通る段階論ではないとしています。

不登校準備段階では、身体症状を伴う場合も、伴わない場合もありますが、
学校に居ることのストレス、登校の葛藤は高まり続けます。

子どもは身体症状を訴えることもありますが、よくある症状(頭痛・腹痛・不眠・身体がだるい・気持ちが悪いなど)でもあるので、
周囲は子どもが学校についてストレス・葛藤を高めていることを認識しにくかったり、軽視しやすい時期と言えます。

不登校開始段階では、不登校の急性期とも言え、登校をめぐって激しく葛藤をします。
その葛藤は、家庭内暴力や精神的な不安定さといった目に見える形でも表現されやすいです。

激しい葛藤は、子ども自身を消耗させます
この時期に子どもを正論で説得しようとしたり力づくで登校させようとしても登校には結びつかず、
子どもの回復を遅らせる逆効果になります

周囲は、休養が必要な状態であることを理解することが必要です

ひきこもり段階では、目に見える形では周囲を避けて引きこもったりしますが、
心理的には不登校開始段階より穏やかに過ごせます。

徐々に余裕がでてくると、自らの葛藤を解決しようという気持ちが生まれることもあります。

その後(齊藤先生によれば)”いつからか、そっと、第四段階(社会との再会段階)に入っていく”とあります。

また、”特に第四段階(社会との再会段階)の開始を敏感に察知することは治療・援助の成否を左右する勘所となるだろう。
と書かれています。

子どもが意欲的な発言をすると周囲はチャンスとばかりに飛びつきたくなりますが、
なるべく焦らずに、自宅外の活動が増えるように丁寧に関わることが求められます。

その他、インターネット上で調べると3段階だったり、6や7段階だったりと色々ありますが、
大体は齊藤先生の内容を更に細かくして、子どもの状態(不登校の罪悪感の有無や生活の様子)と親の関わり方を分かりやすくしたものと思います。

なぜ不登校の支援においてどこもかしこも段階を訴えるかというと、
不登校は段階によって効果的な支援が異なるからでしょう。

不登校開始期の子どもに高校進学の話題を促すと逆効果のこともありますが、
社会との再会段階の子どもには活動性を高める可能性もあります

段階を踏まえた子どもへの関わり方を考える上で、
一番のポイントは社会との再会段階の見極め方でしょうか。

子どもがどうなれば、子どもの背中を押すことを始めて良いのか、という質問は多いです。

いくつかあげますと、
エネルギーの回復(会話がふえる、体力をもてあます、外出が増える)
自宅外への興味(友人の状態や学校行事、勉強や進路のことが気になる)
時間をもてあます(暇を感じる)
などが子どもが回復をしてきた兆候と言えます。

不登校の子どもの状態は親にしか把握できません。
難しく大変なことですが、過干渉や監視にならないように、子どもを気にかけることが必要になります

親の関わり方

不登校も珍しくなくなったとはいえ、実際に我が子が不登校になると親は動揺します。

不登校は親の意気込みと努力量に対して子どもの改善度が比例しにくいので、
改善の見通しがもちにくく、子どもの将来が心配になります。

こうなると親としては不安・焦り・怒りを抱えて当然なのですが、その感情を子どもに直接ぶつけると逆効果になります。
(ブリーフセラピーの用語でいうところの偽解決)

母:「いつまでそうしてるの?あなた昨日、学校行くって言ったじゃない。ゲームばっかりして。それで良いと思ってるの?」
父:「誰だって嫌なことはある。逃げるだけじゃなくて、乗り越えろ!」

という台詞は正しいのですが、現実には効果はなく、子どもは更に守りに入って動かなくなります。

親の発言が正論であれば正論であるほど、子どもとしては反論しようがなく、引きこもったり暴力で応じることになります。

まずは親自身を支える環境があると良いです。
親の不安・焦り・怒りは子どもに直接ぶつけるのではなく、親が相談できる大人に聞いてもらいましょう。

以外かもしれませんが、子どもは親の変化を感じ取るものです。

親(他者)が落ち着くと、子どもの意識は他者ではなく自分に向くようになってきます。

親→子ども、の順番です

親が落ち着いて一旦子どもの不登校を受け入れると、
子どもも自宅でエネルギーを回復するようになります。

そして自分の現状・進路を話題にできるようになってきます。

ですが、子どもが前向きな発言をしたからといって、
大人がここぞとばかりに子どもを動かそうとすると、子どもはまた殻にこもってしまうこともありますので、焦りは禁物です。

子どもの意思を確認し、緊張・不安をうかがいながら具体的な行動に移していきます。

以前の学校に戻る前段階として昼間の活動場所があると、
子どもとしてはスモールステップを踏めることになります。

子どもの状態にもよりますが、以前の学校ではなく、フリースクールや適応指導教室に通えることをもって一旦のゴールとすることも選択肢でしょう。

子どもの年齢にもよっては、たとえば中学生の間は昼間の活動場所を利用し、高校から再スタートをする、
というのも選択肢として有効です。

文部科学省の『「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)』によると、
中学卒業後の高校進学率は85.1%とあります。

実際の相談現場の感覚としても、高校進学を学校への再挑戦とする方は多いです。

話は急に変わりますが、
子どもの養育についてあまり考えすぎないで、とにかく本気で親の考え・思いを伝えることが有効なこともあります。

とくに不登校が始まったばかりの頃、家族の本気の一声で子どもが学校に行くこともあります。

ですが親が本気で思いを伝えても、子どもの不登校に変化がないならば、
親の思いでは解決できない不登校の要因があるのかもしれません。

そして親としては本当に困りますが、
子どもは不登校の理由を言わない(本人も分からなかったり、
分かってても言えない)ことも珍しくありません。

こうなると、親としては努力するポイントも分からなくなるので、改善への希望も持ちにくく、不安になるでしょう。

親子ともに苦しくなる中、何とか子どもを動かそうとして親子のコミュニケーションも一方向になりがちです。

しかし、親からの一方的なコミュニケーションはあまり奏功しないことが多いものです。

まずは親子のコミュニケーションを改善し、子どもが学校に行かずに家にいても安心できることが必要です。

不登校の子どもを支えるポイント

①(繰り返しになりますが)親や大人の不安・焦りを子どもに直接ぶつけない。

これは不登校の回復段階に記載しましたが、子どもの状態によって必要な親の対応も変わります。
再登校を促すにも、タイミングが大事になります。

親の不安・焦りは、このタイミングに支障をきたします。

我が子の不登校に不安・焦りを抱かない親はいないと思いますが、
頭の片隅のこの知識をもっておくと良いでしょう。


どうしていくかを子どもに選択・決定してもらう。
これは自分の人生を主体的に生きることを早くから体験できる、ということでもあります。
(不登校のプラスの側面でもあります)

不登校から抜け出し、どこかに通えるようになったとしても、新たな場所で躓くことはあります。
成人してからの挫折もあるでしょう。

その時に、親や周囲からの被害感ばかり訴えて前に進まない、ということを避けて、
自分で責任をとることに繋がります。

また不登校のお子さんの中には、年齢が上がっても自分の意見が決められない、自分の意見を言えない方もいます。
ダブルバインド(親は進路を自分で決めて良いと言うが、有名校を選ぶまで親は納得しない、など相反するメッセージを同時に伝えること)が影響していることもあります。

このような場合は、自分の意見を持つ、意見を言う、ができるようになることが、学校復帰以上にご本人にとって大切なことになると思います。

何かをやってみる際に、うまくいかない可能性も踏まえておく。

当たり前ですが、不登校を打開しようと何かをやってみて、うまくいかないことはあります。

(親の気持ちは分かりますが)その際に、子どものせいにしない、ということです。

たとえば、子どもが他の学校なら通える、と言ったので転校したとします。
もし転校先でも通えなかった場合に、
「おまえが転校すれば学校行くと言ったから、大変な思いをして転校できるようにしたのに」と、
親は言わないということです。

その他、子どもの友達の助けを借りる、親が仕事を減らす、学校に何かをお願いする、といったことも、
表面的には効果がなかった(子どもの中では変化がおきているかもしれませんが)、
ということはあります。

この時に、子どもの責任にすると、子どもは更に苦しくなります。

うまくいかなかったとしても、親自身が納得できる状態で試せると良いと思います。

不登校に結びつけて制限を増やさない。かといって放任するわけではない。

たとえば、学校に行ってないのに〇〇することは認めない、学校に行ってないんだから〇〇(家の手伝いなど)くらいしなさい、などです。

子どもとしては不登校の自分に負い目があります。

そこに更にペナルティを上乗せされると自信が減り、親への反抗心も増します。

かといって、放任して、やりたい放題になると、ずっとゲーム・動画・SNSなどに熱中してリアルでの社会参加は更に困難になっていきます。

基本的には、不登校だからといって新たに何かを禁止したり、ノルマを課したりする必要はないと考えます。

不登校とは関係なく、スマホ・ゲームを含めた家庭のルールを守り、家族と雑談をし、年齢相応の手伝いをする、といった生活ができると良いと思います

不登校のカウンセリング

ご本人が来室される場合

大人のひきこもりが主訴の場合、カウンセラー(鈴木)はなかなかご本人には会えませんが、
未成年の不登校の場合、ご本人が来室してくれることは珍しくありません。

この場合は、万引きなどのカウンセリングとあまり変わりません。

はじめにご本人の状況と認識を確認させていただきたいので、その際に不登校についても伺います。

ですが不登校の話、つまり出来ていないことの話だけしていてもツラくなりますので、
あまり時間はかけないようにしています。

ご本人のしたい話、関心のあること、現在の楽しいこと、などを教えてもらいます。その他、ご本人が困っていること、家族への望み、なども伺います。

その中で、ご本人は過去に表出できなかった悔しさや怒り、自分自身への不甲斐なさ、不登校の罪悪感、家族への不満などを(最初からできる方もいますが)表現できるようになっていきます。

カウンセラーは共感やノーマライズ(その状況では誰でもそういう風になるよね、という一般化)をして話を聴きます。
やるべき・やらねばならないことではなく、ご本人がしたいことをカウンセラーは応援します。

そうしていくと、ご本人は次第に自己主張できるようになったり、生真面目さや完璧主義が緩まったり、自信や活動が増したり、と何かしらの変化が出てきます。

ここで周囲が、
学校行かないでアイドルの追っかけばかりするな、とか
工作ばかりして遅れた勉強を取り戻しなさい、とか
なんだか親に反抗するようになった、
などのようにご本人の変化を頭から押さえつけなければ、ご本人はさらにエネルギーを溜めることができます。

そして言えなかった自分の意見を言えるようになったり、
学校に戻るか転校するか決められるようになったり、

実際に元の学校に行ってみたり、新しい学校に見学に行ったり、
となってきます。

あとは、後述のご本人が来室されない場合に載っているようなことをご家族とできると良いと思います。

ご本人が来室されない場合

不登校のご本人が来室されないこともあります。

この場合はご家族(多くの場合は親)とのカウンセリングになります。

不登校の子どもは増えたとはいえ、ご家族は我が子が心配です。
また親は不登校だけでなく、その他についても、
〇〇するべきか、しないほうがいいのか、と悩まれています。

カウンセラーはまずは客観的な視点を持っていただき、視野を広げていただくことを意図してお話を伺います。
そして不安と焦りは幾分やわらぎます(ならなかったら、すいません)。

不登校のご本人にどう関わるかですが、
ご本人がいない場合はどんな主訴でも大体、関係性の質問はします。
「もしご本人が今この場にいて、思ったことを何でも話せるとしたら、何と言うでしょう?」と質問します。

また親は、登校をすすめるか・しないか、などのように二択になりがちです。ですので、
「お子さんがどういう状態になったら、学校行く?と聞いて良さそうですか?」
「その状態のお子さんは、リビングでどんな表情して、どんなことを話しますか?親御さんは、どんな声で何と答えますか?」
「そんな親御さんを今のご本人が見たら、何と言うでしょうか?」
と深めていただくこともあります。

カウンセラーは質問をするだけで答えは教えてくれないのか、ならば何のための高い料金を支払うのか、
と言われそうですが、カウンセラーとしてはなるべく相談者ご自身の答えを見つけていただきたいと考えています。

カウンセラーも自身の意見は持っていますが、一般論は的当てみたいなもので、
これは効いた・これは効かない、で終わってしまいます。
自身で気づいて出した答えは、気持ちものりますので意欲的に行えます。

話は戻りますが、
カウンセリングが進んで、親がご本人との関りについて、
こうすれば良いんじゃないか、我が子はこうしてほしいんじゃないか、
となり、
やってみます!となる方もいます。
この場合は、やってみた際のご本人の反応をよく観察することをお願いしています。

一方で、
こうした方が良いことは分かったけど、
それができないんです!(どうしても怒ってしまう、不登校が許せない、など)となる方もいます。

この場合は、親自身の困っていることを主訴としてのカウンセリングに方向転換することもあります。
怒りについてのカウンセリングのように)

家族はお互いに影響し合いますので、親自身のカウンセリングを行って親が楽になることで、不登校のご本人にも良い効果が出ます。

最後に

カウンセラーがとある不登校の親の会に参加した際に、
不登校の子どもが学校に行っていない間に何かにハマるのは、
”自分を取り戻している時間”
と教えていただきました。

その通りだなぁと思いました。
周囲が何と言おうと、ご本人の進みたい方向(やりたいこと、興味あることなど)に活路はあるのだと思います。
不登校になって苦しい中、さらに自分の思いに蓋をして、周囲の「~べき・ねばならない」に合わせていたら、本当に病気になってしまうでしょう。

ただ、いつ終わるかも分からない停滞しているだけに見えるこの時間を、
親が一人で抱えて、このページに載っているような受容的な関りができるのか?というと正直無理だと思います。(カウンセラーだったら一人で抱えきれません)

不登校の相談場所は沢山あり、不登校ご本人の居場所も増えていますが、
あまり合うように感じない際は、千葉カウンセリングルームもお試しいただきたく思います。

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